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FIREARMS
西部開拓時代から近代の銃について

西部開拓時代と云えば、銃は外せないだろう。現在、コンマ数秒の早撃ちを競うファスト・ドロウ (Fast Draw) というスポーツ競技が普及している。また、オールドウエスタンのの服に身を包み馬の上から銃を撃つカウボーイ・アクション・シューティング (Cowboy Action Shooting) というものもある。日本では本物の銃ではないものの、合図から風船を撃つまでのコンマ数秒を競うファスト・ドロウ大会などが各地で開催されている。

西部開拓時代に活躍した銃というと、コルト(Colt) 社ピースメーカー(Peacemaker)という短銃とウィンチェスター(Winchester) 社のライフルが有名だ。現在は、ルガー(Ruger) 社製を愛用している者が多い。拳銃は、至近距離で強力な威力を発揮するが、10mちょっとくらいまでである。それ以上遠くなると、標的を狙うのが非常に難しい。映画の様に拳銃で遠距離のものを射抜くことはありえない。映画「OK牧場(OK Corral:OK囲い)」は実話に基づいていると云われるが、実際の拳銃の打ち合いは10m程度以内の非常に近い距離だった。遠くの標的を狙うハンティングなどではもっぱらライフルを使う。

もっとも、西部開拓時代にカウボーイと呼ばれる者たちが銃を普段、腰に携帯することなかった。現在のアメリカでは、オールドウエスタンの衣装で馬に乗りながら銃を撃つのをカウボーイ・アクション・シューティング(Cowboy Action Shooting)と呼んでいるが、西部劇映画によく出てくる、腰のガンベルトに銃をぶら下げている者を『カウボーイ』と呼ぶのは明らかに間違いである。カウボーイとは牛を育てる酪農家のことであり、ガンマン(Gunslinger, Gunfighter)やギャング、シェリフなどはカウボーイとは呼ばない。同時代の人間ではあるが、全く別の職種に就く人たちであり、カウボーイでないことをよく認識しておかなければならない。つまり、西部劇に登場するその主役達のほとんどはカウボーイではないことになる。西部開拓時代のカウボーイも銃を持っていた者もいたが、その場合でもライフルが主である。カウボーイも銃を持ち歩くことはあるが、腰にぶら下げることはせず、殆どを馬上で過ごす彼らにとって邪魔になるので、拳銃やライフルをもっぱら馬の鞍に付けている

★ コルト ピースメーカー (Colt Peacemaker)

ルガー 銃
コルトSAAに似ているが、ルガー社のもの(実銃)

 おそらく日本で銃器に興味を持っている人は、映画に登場する撃ち合いシーンのカッコ良さに魅せられたのがきっかけだという人が多いのではないか。昨今の映画では『ダイハード』シリーズに代表されるようにセミオート拳銃が全盛だ。マクレーン刑事がベレッタM92を連射するシーンは確かにカッコいい。

 トリガー(引き金)を軽く引くだけで弾丸を発射できるセミオートに比べると、1発ずついちいちハンマー(撃鉄)を起こして打たなければならないシングルアクションのリボルバー(回転式拳銃)は、今では少々野暮ったくも見える。しかし、そんなリボルバーこそが最も映えるシーン、それが西部劇だ。1kgもある鉄の塊のようなゴツイ体躯に、.45口径(直径0.45インチ=11.43mm)という大きな弾丸をたった6発だけ装填して、それで目にも止まらぬ早業で悪玉をなぎ倒していく様子はまさに神業だ。

 西部開拓者らがガンベルトに吊るしていた拳銃、それがコルト・ピースメーカー(Colt Peacemaker)である。正式には「コルト・シングル・アクション・アーミー.45(Colt Single Action Army .45 / SAA.45)と言い、米国コルト社から1873年に発売されるや一躍ベストセラーとなって、西部開拓史上に重要な役割を果たした。

 先に述べたように、SAAは装弾数6発のシングル・アクション回転式拳銃で、弾丸を発射するためには1発ずつハンマーを起こしてからトリガーを引かなければならない。つまり早撃ちをするためにはそれなりの熟練が必要になってくるということだが、映画などのヒーローたちにとってはそれが見せ場のひとつにもなる。

 弾丸の装填についても、シリンダー(弾倉部)がスイングアウトしないので、銃の右側にある小さな扉を開けてシリンダーの穴に1発ずつ弾丸を込めなければならない。また、撃ち尽した後の薬キョウを排出するにも、バレル(銃身)下部にある棒状のイジェクタを手前に引いて押し出す仕組みになっており、新しい弾丸に詰め替えるにはそれなりに時間がかかる。

 弾丸は「.45 Long Colt」というものを標準的に使用するが、「銃は人を殺すもの」という当時の感覚からすると、.45口径はまさに必要にして十分な殺傷能力を有している。「.45口径で1発必殺」の理念は、米国ではベトナム戦争で活躍したコルト・ガバメントあたりまで受け継がれていた。(ちなみに現在米軍で正式に採用されているベレッタM9というセミオート拳銃の口径は9mmである。)とはいえ、実際に人を殺すために火を吹いたSAAが当時どれだけあったかは定かではない。

 .45口径が主流のSAAではあるが、モデルとしては.22口径から.476口径まで実に30種類ものバリエーションがあったらしい。また前述のイジェクタなしのモデルも存在した。さらには、バレルの長さにより、シェリブズ(sheriffs)、シビリアン(civillian)、アーティラリー(artillery)、キャバルリー(cavarly)等と区別して呼ばれる。西部劇などでよく見かけるのはシビリアンで、最も均整のとれた美しいバランスを持つモデルである。

 SAAは過去には何度か製造中止されたことがあるが、レトロファンの間ではいまだに根強い人気があるため、最近では1992年に製造再開された。ただ1997年版Gun Digestによると、米国での標準価格は約1,200ドルで、これは普通の拳銃の二倍近くもする高価な値段がついている。現在、米国コルト社はSAAの復刻版とも言えるモデルを「Model P's」シリーズという名称で8種類製造・販売している。さらに「Colt Cowboy」という名の普及価格帯モデルも出している。(編集注:コルト社は、現在一般人への銃器の販売は行っていない。)

 余談だが、コルトSAAに非常によく似た銃も出ている。特にCimarron Frontier、EAA Big Bore、Ruger Vaqueroなどは、一見しての区別は難しいほどである。米国内では銃器が自由に購入できて護身用に持ち歩くことができると考えている方も多いと思うが、実際はそうではない。州・郡・市などによってガン・コントロールの厳しさはそれぞれに異なるが、大抵の場合は、護身用に人目につかないようにカバンに忍ばせて持ち歩くことさえ禁じている地域がほとんどだ。ニューヨーク市などでは購入にあたっても厳しい条件がついていて、実質は民間人が購入することは難しいとされている。したがって、西部劇のヒーローのように銃を腰にぶら下げて歩くなどというのは、現在の米国ではかなり難しい。米国といえども、現地の法律をよく吟味して銃を扱うことをお勧めする。日本ではモデルガンでも、特別な目的でもない限り、携帯や車での移動もしてはならない。車の中に飾っておくこともだめだ。

★ ウインチェスター M1873

 コルト・ピースメーカー (SAA) とともに米国の開拓時代を代表する銃器。レバーアクション(lever action)で有名なライフルで、米国のウインチェスター社が製造・販売したものである。

 1860年、いわゆるヘンリーライフルが完成、14連発のレバーアクションは大好評となった。その後1866年にヘンリーライフルの欠点であった弾丸装填機構を改善しM1866を発売。そのモデルをさらに改良して、傑作M1873が誕生した。

 さらにM1873は、当初鉄製だった機関部をスチール製に変更することにより、センターファイアの .44-40口径のパワーあふれる弾丸を使用可能にした。また .44‐70用の、さらに長い機関部を持つM1876も発売されている。

 レバーアクションとは、機関部の下部にあるレバーを操作することによって、ハンマーコック、排きょう(空の薬きょうを排出すること)、装填をするシステムのこと。このレバーはトリガー(引き金)ガードと一体化しており、引き金を引いた手をそのまま下前方に動かしてレバーを操作することにより、次の弾丸を発射する準備が完了する。この一連の操作が実に格好いい。

 外観では、バレル(銃身)が2本あるように見えるが、本当の銃身は上部だけ。下部にあるのは「チューブ・マガジン」といって、弾丸を入れる弾倉である。ここからレバー操作により一発ずつチェンバー(薬室)に装填する。弾倉が邪魔にならないなどの長所を持つチューブ・マガジンだが、弾丸を消費するにつれて重心の移動が起こり、精密射撃には向かないなどの欠点もあった。

 ウインチェスター社では、現在もレバーアクションのライフルを製造・販売しており、人気を博している。現行モデルでは、M94シリーズにM1873の面影を見ることができる。M94シリーズの米国での販売価格は500ドル程度から。なお、レバーアクションのライフルは、現在ではUberti、Browning、Marlinなど他社でも製造している。

★ カウボーイ・アクション・シューティング(Cowboy Action Shooting)

The Single Shooting Action Society (English)

Japan Cowboy Sooting Network  (Japanese)

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