
本物のテンガロンハット
(撮影協力:Golden Gate
Western Wear)
|

Cattleman |
日本では、カウボーイが被る帽子のことをどれもこれも、「テンガロンハット(Ten-Gallon Hat)」というけれど、実はこれ、全くの間違いなのだ。カウボーイが被るカウボーイハット(Cowboy Hat)には、ブリムやクラウンの形が異なる様々な種類があり、それぞれに名前が付けられている。その一つがテンガロンハットなのだ。テンガロンハットは、数あるカウボーイハットの一種に過ぎず、カウボーイが被る帽子の総称ではない。右の写真が本物のテンガロンハットである。現在では、キャトルマン(Cattleman)という呼び名のカウボーイハットが主流である。
そのため、よく見るハットは、まずテンガロンハットではない。ウエスタン通の人でも知らない人が意外と多いが、今も昔もリアルカウボーイ(working cowboy) がテンガロンハットを被ることはまずない。テンガロンハットというカウボーイハットは昔、映画に登場するハリウッドカウボーイが良く被っており、1925年ごろの映画の影響で広まった。それ故、日本では「カウボーイの帽子=テンガロンハット」という図式が広まってしまったのであろうか。
また、有名なプロゴルファー、グレッグ・ノーマン(Greg Norman)が被っている帽子は、アメリカのカウボーイハットに似ているが、オーストラリア独特のもので、オーストラリアン・ブッシュ・ハット(Austrarian Bush Hat)という。特にアクーブラ社のアクーブラハット(Akubura hat)が有名。彼を真似たゴルファーの帽子もブッシュハットというのが正しいのであろう。映画「クロコダイル・ダンディ(Crocodile
Dundee)」で主人公が被っている帽子も典型的なブッシュハットである。当然これらもテンガロンハットとは呼ばない。
テンガロンハットという名前の由来は10ガロンの水が入るから、と記述している辞書や書籍があるが(参考:テンガロン・ハット「水が10ガロン入る帽子の意」小学館・大辞泉、2007年現在)、これは明らかに間違いだ。テンガロンハットは、カウボーイハットの中でもひときわ大きなハットだが、いくら大きいといっても10ガロン(38リットル、1ガロン米=約3.8リットル)もの水は入らない。
実はテンガロンハットのガロンは容積の単位を表すgallonとは関係なく、スペイン語の「ひも、編む」を意味するgalónに由来するという。テンガロンハットは、今日のカウボーイハットの元となった帽子を作ったニュージャージー出身の帽子職人、ジョン・バターソン・ステットソン(John
Batterson Stetson)(1830-1906)が考え出した帽子で、名前にスペイン語を使ってTen Galónと命名したが、後に、このスペイン語のgalónが、英語のgallonと置き換えられて広まってしまった。
もっとも、リアル・カウボーイはカウボーイハットとも言わない。単にハット、または、Stetson や John B という(John B. Stetson は、帽子全般を指すのにも使われる)。ウエスタンハット(Western Hat)ともいうが、あまり使われない。ウエスタンハットというときは、カウボーイハットだけでなく、西部開拓時代に被られていた帽子全般を指し、ギャンブラーのハットなども含まれる。
日本では、テンガロンハットと称する帽子がたくさん売られているが、ほとんどはカウボーイハットですらない帽子であるのでご注意を。アメリカの本物のカウボーイハットは主にフェルトかストロー製で硬く、独特の形(シェイプ)を硬く保っている。日本では単につば(ブリム)が広く、巻き上がっている帽子をなんでも「テンガロンハット」と呼んでいるようだ。
参考:
villagehatshop.com
The Straight Dope