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HORSEBACK RIDIN' |
ウエスタン乗馬について |
ウエスタン乗馬 (Western Riding)は、牛を追うカウボーイの乗馬から生まれた馬の乗り方で、今日では、馬術として高度に発達し、アメリカだけでなく世界中に広く普及している。
各種競技会が日本を含め世界各地で開かれているほか、日本では、観光牧場などでウエスタン乗馬用の鞍(ウエスタンサドル)が良く使用されている。これは、そのワイルドなイメージと、ウエスタンサドルがどっしりとして安定感があり、初心者でも安心して乗れるからだろう。
ウエスタン乗馬は、激しく動く牛を追いかけるために機敏な動作が要求され(牛というとのんびりしたイメージがあるが、実はとても機敏に動き、また、意外にとても賢い)、それでいてカウボーイ達は一日中、馬に乗って労働することから、無理がなく人も馬も疲れさせないことを目的とした、馬にとって自然な動きを求める乗り方だ。馬がその目的にそって調教され、鞍やハミ(馬の口にくわえさせる部分)などの馬具もその目的に添って作られている。
日本で一般的なブリティッシュ乗馬(海外では主にイングリッシュと呼ばれる)に比べ、非常に異なる印象を受けるが、スタイルは異なっても、馬の特性を利用しているので本質的な部分は同じだ。ただし、生まれた目的(ブリティッシュは主に軍隊の乗馬から、ウエスタンは賢く素早い牛の動きに合わせる)とアプローチの仕方が違うので、鞍などの馬具や乗馬用品、外観も大きく異なり、騎乗スタイルや馬の調教方法、馬に求めるものに違いがある。た、日本ではブリティッシュの乗馬クラブの体制とウエスタンのの乗馬クラブの体制で違いが大きいので、まるで違うかのように思えるかもしれない。鞍の形が全く違うのに目が行きがちだが、見比べる機会があったら、馬の首の部分をよく観察してみよう。ブリティッシュでは、馬の首はチェスの駒のように顎を引いた状態がいい状態(屈頭)である。ウエスタンでは、首が水平になっているのがよい。また、ブリティッシュの手綱(レイン、Rein/馬の口につながっていて騎手が手に持っている紐)はピンと張っているように見える。一方、ウエスタンでは、手綱はだらんと垂れている(Loose rein)。一見すると、ブリティッシュでは常に緊張し、ウエスタンはだらっとしているように見える。しかし、実際は、どちらも、騎手と馬の間で適度な感じで連絡をし合っている。馬と人との関係はスタイルが変わっても、同じだ。どちらも、実際には押しても、引いてもいない。馬に指示を送っていることに変わりはない。日本では、ウエスタン/ブリティッシュの違いよりも、クラブの違いの方が大きいだろう。
西部劇から受ける荒々しい乗馬の印象とは大きく異なり、現在のウエスタン乗馬は、ウエスタンならではのダイナミックでありながら、馬の考え、気持ちを把握し、一歩一歩の馬の動きを細かくコントロールしようという緻密な乗り方となっている。また、ウエスタンというとすぐに、荒馬を乗りこなすロデオ種目(サドル・ブロンコ・ライディングなど)を連想しがちだが、ウエスタン乗馬はロデオとは全く別の競技種目である。もちろん、ロデオをサポートする Pick-Up Man や、Tie-Down Roping、Team Roping 、Steer Wrestling などのロデオ競技は、非常に優秀なウエスタン乗馬の技術を見せる。
ウエスタン乗馬で主に使われる馬は、クォーターホース (Quarter Horse)と呼ばれる品種である。筋肉たくましく、ダッシュ力があり、敏捷で、また、非常に従順である。4分の1マイル距離の競争を行っていたことからこう呼ばれている。17世紀初頭にスペイン由来の馬からアメリカで作り出された最初の純アメリカ原産の品種である(アメリカ最初の原産種はモルガン種であるという説もある。参考:American Morgan Horse Association)。ウエスタン馬術競技やクォーターホースによる競馬、認定、指導員の育成プログラムなど、クォーターホース普及のための様々な活動を行っているAQHA (American Quarter Horse Association) という非常に大きな協会がある。AQHAは、馬術会だけでなく、世界中の全ての分野を通して、世界最大の規模の協会である。日本では、AQHAは、競技会の運営だけというイメージを持っている人もいるかもしれないが、AQHAには様々なプログラムが用意されており、AQHAのメンバーになる真のメリットは、そのプログラムを活用することにある。
ただ馬という動物といるだけでも楽しいし、まず、乗ってその目線の高さに感動する。乗っているものが生きているという妙な感覚が面白い。
馬に乗って外の世界に乗り出して(外乗/がいじょう、野外騎乗、Trailという)、木々の合間をくぐり、森を過ぎ、丘を超え、川をジャブジャブと渡る。車では決して見ることができない、すばらしい世界へ行くことができる。普通の乗り物と違って、一人ではないという心地よさがある。駆歩(かけあし)での爽快感も他では味わえないだろう。
乗馬でもっとも楽しいのは、なんと言っても馬との対話だ。馬には1つの人格(馬格?)というか、1つの気持ちがある。その気持ちと対話することによって、こちらの思い通りのことをしてくれる訳だ。でも、いつもこちらの言うことをすんなり聞いてくれるわけではない。
馬と対話することによって、馬の気持ちを自分のやって欲しい方向にもっていくのだ。対話と言っても、言葉を使うわけではなく、手綱(だづな)、脚(きゃく、足のこと)を始め、お互いの全身の五感の使ってお互いを感じ取りながら対話する。その対話自体が楽しいし、それがうまくいった時の一体感はなんとも言えないすがすがしいものだ。それと共に、自分の気持ちが素直になる。
ある時はうまく聞いてくれても、馬の気持ちも人間同様、時間と共にどんどん変化する。反抗的なったり、とても素直になったりもする。また、馬一頭一頭、性格も異なり、いろんな馬ごとに違った乗り方を味わうことができる。馬との対話、つまり乗馬を通して初めて馬の気持ち、性格が見えてくる。馬はパートナーとなる。
いつまで続けても飽きることがない。
海外、特にアメリカで乗馬したい場合は、こちらを参照。アメリカには多くのDude Ranchと呼ばれる宿泊して乗馬を楽しめる施設がある。多くは、日本のペンションのような宿泊と手作りの食事込みで、一泊いくらいという値段が決まっている。乗馬は料金に入っているが、乗るスケジュールの時に一緒に外乗に行っても良いし、乗らずに牧場周辺を散策してただ風景を楽しんでも、釣りに行ってもよい。ただし、最低3泊することなどの規定があるところも少なくない。予約は普通にホテルを予約するのと同じような感じ。一列に並ばなくてよく、適度に散らばって行くが、原則、駆歩はさせてくれない。常歩(ゆっくり歩く速度)で数時間かけて楽しむのが一般的。オーナーが許可した場合は、駆歩をさせてくれるところもある。
また、宿泊なしで外乗だけ楽しめるRanchもある。そのようなRanchは、国立公園の内外に多く見つけられるだろう。ハワイのパーカーランチでも乗れる。日本の乗馬クラブで予約するのと同じ要領でできる。乗馬の経験を聞かれるが、初めて、とか、数回、とか、たくさん乗っているくらいの答えでよい。アメリカの観光用の牧場では、初心者でも大丈夫。乗った経験がないか、少しはあるか、それ以上かだけが伝わればよい。いずれも、予約は早めにとっておいた方がいいだろう。キャンセル料金もかかる場合があるので、要確認。
アメリカのトレーニングランチで、腕を磨きたい場合は、 AQHAやJQHAに問い合わせるのがいいだろう。
レイニングのスライディングストップ |
カウボーイの乗馬から発達したウエスタン馬術を競うウエスタン馬術競技というスポーツがある。カウボーイハットにブーツというカウボーイのいでたちで高度な技術を競う。カウボーイハットを被るというのが、ルールに盛り込まれている。ウエスタン馬術競技は、賢く機敏な牛の動きに追従するカウボーイの乗馬から発達した技術を特に技として取り上げ、その技を高度にその点を高めたものだ。レイニングなど競技では牛は用いないが、すべての技は、牛の動きにいかに追従していくか、に対応している。現在では、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツをはじめ、世界各地でその大会が開かれており、日本でも日本クオーターホース協会 (JQHA)はクォーターホースを使ってレイニングなどの馬術大会を開いている。牛の群れの中から指定した1頭だけを群れから引き離す、カッティングという、とても面白い競技では牛を使うが、日本では牛の調達が難しいこと、また、カッティングホースを育ているは特別に高度なことなどの理由で、日本では行われていない。
日本では、ロデオや西部劇以外に情報がないせいか、「ウエスタンは荒々しい」というイメージがどうも付きまとう。レイニングやトレイルクラスなど、ウエスタン馬術競技を見れば考えは一変するだろう。現代のウエスタン馬術は、馬の気持ちを把握し、一歩一歩を緻密にコントロールしようという高度な技術に発達してしていることが分かる。乗馬が分からないとその凄さが分からず、ロデオと違って派手な動きはあまりないので、試合中、たまに歓声が上がるが、試合を見ていてもつまらないと感じるかもしれない。
ウエスタン馬術競技の紹介
アメリカでは、ウエスタン馬術競技会が大小とも非常に多く、このための馬が非常に高額で取引される市場がある。レイニングという競技用のレイングホースは、200〜600万円が中心。カッティングホース、プレジャーホースはさらに高額で数千万円、1頭で億を超える馬も珍しくない。アメリカにはウエスタン馬術競技の馬だけを育てる牧場が多くあり、プレジャーホース、レイニングホースなど、競技種目別の馬が育てられている。馬を育て上げて優勝し高値で売る、また、生徒を大会で優勝する様に指導させられれば、ひと財産築ける。アメリカには、そのような豊かな市場が形成されている。ボブ・ルーミス、アル・ダニングなど優秀で有名なトレーナは、こういった牧場を経営し、競技馬の育成、トレーニングを行っている。
- Western Horseman
- アメリカや日本でも広く購読されているウエスタン乗馬や馬に関する雑誌。アメリカの殆どのウエスタン馬術愛好家は購読している。ウエスタン乗馬に興味のある人なら必読。これを知らなきゃもぐりかも。定期購読は上記のリンク先より可能。
- 雑誌「乗馬ライフ」 オーシャンライフ
- 乗馬に関する総合雑誌。毎月の25日に発売。乗馬に関する幅広い情報が得られ、ブリティシュだけでなく、最近はウエスタン乗馬が載ることも多い。
- ムック「乗馬への道」 文園社
- 乗馬に関するムック。不定期刊行誌で、毎回、異なる特集を取り上げている。ウエスタンが載ることも少なくない。
- 書籍 「ウエスタン ホースバック・ライディング」 エイムック126
- 株式会社 えい出版社 ISBN4-87099-217-5 1,800円
- リチャード・シュレイク、パット・クロース共著 土岐田勘次郎監修
- アメリカで有名な、Western Horseman Book シリーズの Western Horsemanship の競技種目の教本の翻訳本。 日本語訳は未熟で信用できない部分があるが、日本で初めての唯一の本格的なウエスタン乗馬の本だ。
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