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Chasing The Dream - 芝原 仁一郎

Written by Jin'ichoro Shibahara. 芝原仁一郎


シーズン 2008

9月 1日(月)
Evanston, WY. エヴァンストン、ワイオミング:泥
Evanston Cowboy Days エヴァンストン・カウボーイ・デイズ(PRCA)

朝起きてみると、すでに土砂降りの雨だった。ロデオの楽しみの1つに、どのような天候状態でも開催されることがある。「中止」となるのは、それこそハリケーンに襲われるときくらいだろう。グスタフがルイジアナに上陸する、というニュースがどのニュース・チャンネルでもやっている。この土砂降りもその影響なのだろうか。

エヴァンストンまでは90マイルほどしかない。ワイオミングとはいえ、ユタとの州境に近い町なのでそれほど遠くない。が、この雨だ。ロデオの開始は2時だが、フリーウェイの状況も考えて、昼前には出た。東へ進むにつれ、ときおり薄日が差す。雨雲を抜けきれているとは思わないが、晴れてくれるだけでもありがたい。

このロデオの名前にもあるように、ワイオミングはカウボーイが多い州だ。今年で72回目を迎えるこのロデオの歴史は古い。ロデオ・オフィスの壁にかつての選手の写真やら寄せ書きめいたものが飾ってある。エントリー・フィーは$120。ブルはバー・T・ロデオ社(Bar T Rodeo, Inc.)の#5コーヒー・ブレイク(Coffee Break)。名前から黒いブルかと想像したが、薄茶のブルで、昨日のファースト・フライトより少し大きい。バー・Tのジェフがいたので話を聞くと、とにかくキックがすごいと教えてくれた。先週のトゥリィモントンで知り合ったバー・Tのスタッフで、ベアバック・ライダーでもあるジャレッドに声をかけると、やはりコーヒー・ブレイクはキックの蹴り足が高いので胸を張っていないとやられる、と教えてくれた。

ロデオが始まるまで、周りを歩いて写真を撮ったが、みんな寒そうにしている。事実寒かった。ジャケットを着ていてもまだ寒い。ぬかるんだアリーナの中で、ローパー達が馬に乗りウォーミング・アップをしているが、ほとんどの選手が冬用の服装をしている。

泥仕合、とはよく言ったものだが、この日のロデオで泥にまみれない選手は皆無だった。特にスティア・レスリングはある意味、圧巻だった。おそらく、雨のロデオで最も観客から喝采を浴びるのは、スティア・レスリングだ。ブルライダーたちもこの日は全員シュートの上から観戦し、ハットの上からブーツの先まで泥に染まるスティア・レスラーたちに歓声を上げたくらいだ。

そして私たちの出番がきた。コーヒー・ブレイクは右側のデリヴァリーに入る。泥にまみれるのを嫌い、チャップスを着けない選手もいるが、私はいつもどおり着けた。このとき雨はやんでいた。

出る。最初のジャンプは大きくない。が、次のキックが高い!そして前に、というより横にスライドするような形で飛ぶ。四つ足共に浮く「エアー」が入る。左腕は伸び、シートから外れている。右腕が大きく後ろにそれている。そこから少しずつ右に回りこむような形で、彼は方向をずらしていく。このあたりで私は彼を見失う。そのままその先の泥の中へ、背中から落ちていった。オーストラリア人のブルファイター、フィルが完璧なタイミングで私を守ってくれていた。トゥリィモントンで一緒に晩飯を食べた彼だ。立ち上がって彼に礼を言い、もう一人のマークにも礼を言った。マークはサーモンで知り合ったブルファイターだ。「オレ、飛んでたな!」正直な感想だ。


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試合後、ブルライダー全員が残って汚れたロープやチャップス、スパーなどの手入れをしていた。ブラシでことごとく泥をはたく。これを怠ると、明日以降がやっかいだ。

まだ陽は高いが、すでにアリーナは静かだった。車に戻り、周りにいた何人かに別れを告げた。週末また彼らとソルトレイクで顔を合わす。

ワイオミングからユタに入るあたりで、西日が顔を差す。思わず顔をしかめる。

それにしても、今日のコーヒーは苦すぎた。

芝原仁一郎

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