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RODEO REPORT
本場アメリカのロデオ界の現状がよくわかる

ロデオ界は波乱万丈 (2004年11月20日)

続・ロデオ界は波乱万丈 (2005年3月24日)

ロデオ界は波乱万丈 Vol.3 (2005年9月23日)

ロデオ界は波乱万丈 Vol.4 (2005年10月26日)

ロデオ界は波乱万丈 Vol.5 (2005年12月 2日)

ロデオ界は波乱万丈 Vol.6 (2006年12月 3日)

PRCA−WPRA間の騒動表面化

PRCA プロ・ロデオ界最大の協会
PWBR PRCAの独自のバレルレーシング認定団体
WPRA PRCAとは独立したバレルレーシング協会

世界一のロデオ認定団体、プロフェショナル・ロデオ・カウボーイズ協会(PRCA)と女性限定のロデオ種目、バレルレーシング世界一の認定団体女性プロフェッショナル・ロデオ・協会(WPRA)との間で昨年から水面下でくすぶっていたあつれきが遂に表面で爆発した。2006年8月17日、PRCAは2007年からWPRAとの関係を打ち切り、代わりに独自のバレルレース認定団体、プロフェッショナル・ウーマンズ・バレルレーシング(PWBR)をPRCAの従属団体として立ち上げ、ロデオ委員会はWPRA、PWRB何れの団体に認定を求めても良いが、2007年からはPWBR認定のバレルレースに於ける賞金のみを世界順位に反映させると正式に発表した。

PRCAによるWPRAの蔑視とPWBR立ち上げ経緯

ことは2005年7月、PRCAがWPRAの選手に対し多額の競技費を支払うようもとめたことにまで遡る(Vol.4参照)。これによってPRCAとWPRAとの間に亀裂が生まれたが、2005年12月には各ロデオに於いてWPRAの選手は通常の費用に加え$2余分に支払うことで互いに合意し、ことは落ち着いたかに見えた(Vol.5参照)。しかし、2006年5月にPRCA理事会はWPRAの選手が既にロデオ毎に$15支払うPROCOM費(PROCOMはPRCAが運営するロデオ出場申し込みシステム)を2007年に$10増やし、それより9年間更に$1ずつ年次増加することを決定。これはPRCA選手一人当たり$5のPROCOM費に対し、WPRAの会員は増加により2016年には一人当たり$41のPROCOM費をロデオに出場する度に支払わなければならない計算になる。これに対しWPRAの理事会が激怒したのは言うまでも無く、WPRAの会長もPRCA理事会に対し正式な抗議文を送っている。これでも十分WPRAとその選手達の怨みを買うに相当な行動であるのにも関わらず、5月14日にトップ級バレルレーサーのデニス・アダムスにバレルレーシングの将来像について訊ねられたPRCA会長のトロイ・エラーマンは「バレルレーシングは将来もロデオの一部として存続するであろう」と断言した上で、5月16日開催の次期PRCA理事会会議に於いてバレルレーシングを組織内で行う案が議題に挙がっていると答えた。この措置によりバレルレーサーはPRCA会員になる必要が生じるのかとWPRA副会長フィリス・ウェールズが訊ねるとエラーマンは肯定の返事をし、WPRAに多大な怪しみを抱かせていた。

そして、8月17日、PRCAはPWBR立ち上げを正式に発表。これを耳にしたWPRAは同日に質問状をPRCAに送付したが返答は得られず、8月22日にはPRCAの理事会に対しPRCAの一方的な行動に対して遺憾の意を表すと共に$2の出場料増量を継続し、両団体のあつれき解消を目的としたPRCA理事員3人とWPRA理事員3人からなる特別委員会立ち上げを呼びかけた書状を送った。しかし、8月23日にPRCA理事会はこれ以上WPRAと交渉する意向は無く、決定した行動を継続するとの返答だけを返した。

WPRAの反撃

PRCAの冷淡な拒絶に対しWPRAも黙ってはいない。ロデオを開催するロデオ委員会に継続してWPRAを通してバレルレーシングを認定するよう呼びかけ、ロデオファンにもロデオの主要スポンサーであるWranglerやJustin Boots、Dodge、CoorsなどにWPRAへの支援を継続するよう請願書を送ることを呼びかけ、9月22日、PWBRの立ち上げはPRCAによるバレルレーシング独占を企てた悪質行為であるとし、WPRAはPRCAによる関係打ち切りとPWBR立ち上げの指し止めを求め訴訟を起こした。これに対しPRCAは不実、不正及び違法行為をPRCAがしたというWPRAの主張は事実無根の批判であると言い、WPRAはPWBRに認定を求めれば訴えると数々のロデオ委員会を脅しているとも公言している。PWBRの立ち上げはバレルレーシング独占の行為ではなくバレルレーシングに於ける競争を生み出す試みであるとPRCAは主張し、WPRAが訴訟を取り下げず、裁判に及んだ際にはPRCAが勝利すると断言した。

PRCAが言う様にWPRAが本当にロデオ委員会を脅しているかどうかは分からないが、先日公表されたPWBRの規約によるとPWBRの認定を受けていないバレルレースを行ったロデオは自身のロデオを「PRCAロデオ」及び「PRCA認定ロデオ」と宣伝してはならず、「6種目PRCA認定」または「一部PRCA認定」としなければならないとしている。「PRCAロデオ」と宣伝することはロデオの収益に大きく影響することであり、これを行えないとなるとバレルレースの認定をどの団体に求めるかのロデオ委員会の検討に多大な影響をかけることは確かであり、WPRAによる訴訟の脅しは無くとも全ロデオ委員会は確実にPRCAの圧力は受けている。また、PRCAが不実、不正及び違法行為をしているというWPRAの主張を裏付ける出来事も起きている。

PRCA内争勃発か?

10月3日、元PRCA理事員ジェームス・ウォーレンは760人のPRCA会員を代表しPRCAに対して訴訟を起こした。PRCA規約によると全会員の10%が要請すれば理事会は会員会議を開催しなければならないとされている。しかし、会員数の10%による要請を得ようとした際、PRCAは正確な会員数を記載した記録の提供を怠ったとウォーレン氏は主張する。また、8月8日に会員による会員会議開催の要請がPRCAに提出された後、PRCA理事会は8月16日に臨時会議を開き、委任投票を無効にする変更を規約に加え、更に会員の要請で開催された会議では理事会が決定した議題のみが協議の対象とされる変更も行い、これは会員の権利を損なう活発な工作行為であるとウォーレン氏は主張する。PRCA理事に対するPRCA会員の不満は最近募る一方であり、PRCA理事会によるこの行為は会員が会議で理事会の構成とPRCA運営方針の変更を強要するであろうとみた理事会が自己保存の為に行ったという見方が強い。

WPRAとの争いでは自分達が正当であると主張しているPRCA理事会だが、別団体が訴訟を起こした場合は別としても、自己の会員数百名が訴訟を起こしたとなると、WPRAに対する行為を含めPRCA理事会の行動に対して疑念を抱かざるを得ない。

これから…

WPRAによるとWPRAとPRCAは現在連邦判事が審理出来るまで裁判所の命令により暫定合意を協議しているとのことである。PRCAに対して起こされた訴訟が裁判になるかどうかはまだ未定であるが、裁判となるか、和解となるか、何れにしてもこれらの要求がPRCAにどの様な変化を及ぼすか、はたまた変化を及ぼすに至らないのか、これから注目したいと思う。


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